親や親族が運営していた民泊物件を相続することになったものの、「赤字が続いている」「管理する時間がない」「トラブルが心配」といった理由から、民泊 相続 放棄を検討している方が増えています。
相続放棄は、被相続人の財産と負債をすべて放棄する法的手続きであり、民法915条により相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。この期限を過ぎると単純承認とみなされ、赤字や債務も含めてすべての相続財産を引き継ぐことになります。
本記事では、相続した民泊物件を放棄すべきかどうかを判断する**5つの判定チェックリスト(100点満点)**と、相続放棄の手続きフロー、放棄後の民泊物件の取り扱い、専門家への相談タイミングまで、2026年最新の法改正とエビデンスをもとに網羅的に解説します。
相続した民泊を放棄すべきか?5つの判定基準で総合診断
相続した民泊物件を放棄すべきかどうかは、財務状況・管理負担・法的リスク・感情的要因・時間的余裕の5つの観点から総合的に判断する必要があります。以下の5つの判定チェックリストで点数を集計し、70点以上なら相続放棄を強く推奨、50〜69点なら相続放棄を検討、30〜49点なら限定承認または売却、0〜29点なら単純承認が適切です。
財務状況から見る相続放棄の判断(30点満点)
民泊物件の財務状況は、相続放棄を判断する上で最も重要な要素です。以下の4項目で自己診断してください。
| 項目 | 条件 | 点数 |
|---|---|---|
| 累積赤字額 | 100万円以上 | 10点 |
| 月次赤字額 | 5万円以上/月 | 7点 |
| 借入残高 | 500万円以上 | 8点 |
| 資金ショート期間 | 6ヶ月以内に発生の見込み | 5点 |
累積赤字が100万円を超え、月次赤字が5万円以上続いている場合、改善の見込みが低く、相続放棄が現実的な選択肢となります。観光庁の「住宅宿泊事業の実態調査」によると、民泊事業者の約15.2%が赤字経営であり、特に都市部の区分マンション民泊では固定費(月10〜15万円)と変動費(月3〜5万円)が重く、稼働率30%未満が3ヶ月続くと累積赤字が急速に膨らみます。
また、観光庁の2025年11月時点のデータでは、住宅宿泊事業の届出件数57,512件のうち、廃業件数は20,661件で、廃業率は約36%に達しています。赤字経営が続く民泊物件は、今後も収益改善の見込みが低いため、相続放棄を検討する重要な判断材料となります。
詳しい赤字の原因と改善策については、民泊赤字の原因TOP5と改善難易度の記事もご参照ください。
管理負担と法的リスクから見る判断(25点満点)
民泊物件の管理負担と法的リスクも、相続放棄を判断する重要な要素です。
| 項目 | 条件 | 点数 |
|---|---|---|
| 遠隔地での管理 | 相続人の居住地から車で2時間以上 | 7点 |
| 近隣トラブル履歴 | 過去1年間に2回以上の苦情 | 6点 |
| 管理組合規約違反 | 分譲マンションで民泊禁止の規約あり | 8点 |
| 消防法・建築基準法違反 | 未対応の違反事項あり | 4点 |
民泊物件が遠隔地にあり現地管理が困難な場合、運営代行費用(月3〜5万円)が追加でかかります。また、分譲マンションの管理組合規約で民泊が禁止されている場合、相続後も運営を継続すると管理組合から差し止め請求や損害賠償請求を受けるリスクがあります。
2023年4月施行の改正民法940条により、相続放棄後も「現に占有している」相続財産は保存義務を負うため、放棄後すぐに手放せるわけではない点に注意が必要です。この点については後述の「相続放棄後の民泊物件はどうなる?」で詳しく解説します。
心理的負担と運営意欲から見る判断(20点満点)
民泊運営の経験や継続意欲の有無も、相続判断において重要です。
| 項目 | 条件 | 点数 |
|---|---|---|
| 被相続人との関係性 | 疎遠だった・関係が良好でなかった | 6点 |
| 運営継続への意欲 | 民泊運営の経験なし・継続意欲なし | 7点 |
| 心理的ストレス | 相続手続き・運営管理に強い不安 | 7点 |
親が民泊を運営していたものの、相続人自身は民泊運営の経験がなく、今後も継続する意欲がない場合、無理に相続すると心理的ストレスと経済的負担が増大します。特に赤字が続いている民泊物件は、継続しても黒字化の見込みが低いため、早期の民泊 相続 放棄が精神的・経済的な負担を軽減する現実的な選択肢となります。
時間的制約と他の選択肢から見る判断(15点満点)
相続放棄には法定期限があり、時間的余裕も判断材料となります。
| 項目 | 条件 | 点数 |
|---|---|---|
| 相続開始からの経過日数 | 60日以上経過 | 5点 |
| 売却・転用の困難性 | 立地が悪く買い手がつかない | 6点 |
| 他の相続人の意向 | 複数の相続人が放棄を希望 | 4点 |
相続放棄は相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります(民法915条)。既に60日以上経過している場合、残り1ヶ月で判断・手続きを完了させる必要があるため、早急な決断が求められます。また、立地が悪く売却や転用が困難な場合、相続放棄が唯一の現実的な選択肢となることがあります。
その他の資産と負債から見る総合判断(10点満点)
相続財産全体のバランスも、相続放棄の判断に影響します。
| 項目 | 条件 | 点数 |
|---|---|---|
| プラスの相続財産 | 他にプラスの財産がほとんどない | 5点 |
| 負債総額 | 民泊関連の借入・未払金が多額 | 5点 |
相続放棄はすべての相続財産を放棄する「包括的な手続き」であるため、民泊物件のみを放棄して他の財産を相続することはできません。ただし、他にプラスの財産がほとんどなく、民泊関連の借入や未払金が多額にある場合は、相続放棄が最も合理的な選択となります。
プラスの財産がある程度あり、民泊だけを手放したい場合は、限定承認や単純承認後の売却を検討しましょう。限定承認は相続人全員の同意が必要ですが、プラスの財産の範囲内でのみ負債を承継する制度です。
合計点数による推奨アクション
上記の5つの判定基準で合計点数を算出し、以下のアクションを参考にしてください。
- 70点以上: 相続放棄を強く推奨
- 50〜69点: 相続放棄を検討(専門家への相談必須)
- 30〜49点: 限定承認または単純承認後の売却を検討
- 0〜29点: 単純承認し、改善策を実行
民泊の相続放棄手続き|3ヶ月以内に完了させる4週間スケジュールと費用
相続放棄は相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。以下の4週間スケジュールに沿って、計画的に手続きを進めましょう。
第1週:現状把握と必要書類の収集
相続放棄を決断する前に、まずは民泊物件の現状を正確に把握することが重要です。
主なタスク:
- 民泊物件の財務状況を確認(賃貸借契約書・収支記録・借入残高・未払金)
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)を取得
- 相続人全員の戸籍謄本・住民票を取得
- 民泊物件の登記簿謄本を取得
- 5つの判定チェックリストで点数を算出
費用目安:
- 戸籍謄本(1通450円)×3〜5通 = 約1,350〜2,250円
- 住民票(1通300円)×相続人数
- 登記簿謄本(1通600円)
被相続人の戸籍謄本は、出生から死亡までの連続したものが必要です。本籍地が複数回変更されている場合は、それぞれの市区町村から取り寄せる必要があり、時間がかかることがあります。余裕を持って早めに取得しましょう。
第2週:家庭裁判所への申述準備
必要書類が揃ったら、家庭裁判所へ提出する申述書を作成します。
主なタスク:
- 相続放棄申述書の作成(裁判所ウェブサイトからダウンロード可能)
- 必要書類の整理(戸籍謄本・住民票・登記簿謄本)
- 他の相続人との協議(全員が放棄する場合は順位に注意)
- 専門家(弁護士・司法書士)への相談(必要に応じて)
費用目安:
- 収入印紙: 800円(相続人1人あたり)
- 郵便切手: 約500円(裁判所により異なる)
- 専門家報酬: 3〜10万円(依頼する場合)
相続放棄申述書は、裁判所ウェブサイトから書式をダウンロードできます。記入例も掲載されているため、専門家に依頼しなくても自分で作成することが可能です。ただし、相続人が複数いる場合や、限定承認と迷っている場合は、専門家への相談を推奨します。
第3週:家庭裁判所への申述と審理
申述書と必要書類を揃えて、家庭裁判所へ提出します。
主なタスク:
- 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述書を提出
- 裁判所から照会書が届いた場合は速やかに回答
- 民泊物件の現状維持(放棄後も保存義務あり)
申述に必要な書類:
- 相続放棄申述書
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
- 相続人の戸籍謄本
- 相続人の住民票または戸籍附票
裁判所へ申述書を提出すると、通常1〜2週間後に裁判所から「照会書」が郵送されます。照会書には、相続放棄の意思確認や、相続財産を処分していないかなどの質問が記載されています。速やかに回答し、返送しましょう。
第4週:相続放棄申述受理通知書の受領と事後対応
照会書を返送してから約1〜2週間で、裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が郵送されます。
主なタスク:
- 家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が郵送される(申述から約1〜2週間)
- 債権者や利害関係者へ相続放棄を通知(必要に応じて)
- 相続財産清算人の選任を申し立て(後述)
費用目安の合計:
- 収入印紙: 800円
- 戸籍謄本等: 約2,000円
- 郵便切手: 約500円
- 合計: 約3,300円(専門家依頼なしの場合)
- 合計: 約3.3万〜10.3万円(専門家依頼ありの場合)
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄が正式に受理されたことを証明する重要な書類です。債権者から請求があった場合は、この通知書のコピーを送付することで、相続放棄したことを証明できます。
相続放棄後の民泊物件はどうなる?保存義務と相続財産清算人の役割
相続放棄が受理された後も、民泊物件がすぐに手放せるわけではありません。2023年4月施行の改正民法940条により、相続放棄者が「現に占有している」相続財産は、次順位の相続人または相続財産清算人に引き渡すまで保存義務を負います。
改正民法940条による保存義務の変更点
民法改正により、相続放棄後の保存義務の範囲が大きく変わりました。
改正前(2023年3月31日まで):
相続放棄者は、次順位の相続人が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産と同一の注意をもって管理を継続する義務がありました(旧民法940条1項)。これはすべての相続放棄者に適用されていました。
改正後(2023年4月1日以降):
相続放棄者が**「現に占有している」相続財産**のみ、保存義務を負います(新民法940条1項)。つまり、相続放棄時に民泊物件の鍵を持っている、実際に管理している場合は保存義務が発生しますが、遠隔地に住んでおり一度も現地に行っていない場合は保存義務を負いません。
この改正により、相続放棄後の負担が軽減されるケースが増えましたが、民泊物件の鍵を持っている場合や、相続開始後に一度でも物件の管理を行った場合は、保存義務が発生する点に注意が必要です。
出典: 法務省「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)について」
保存義務の具体的な内容と期間
保存義務がある場合、以下の行為が求められます。
保存義務に含まれる行為:
- 民泊物件の戸締まり・施錠
- 水道・電気・ガスの最低限の維持管理
- 雨漏り・破損箇所の応急処置
- ゲストの予約がある場合の対応(キャンセル手続き)
保存義務に含まれない行為:
- 民泊運営の継続
- 大規模な修繕・リフォーム
- 新規ゲストの受け入れ
保存義務期間中も、民泊物件の固定資産税・管理費・修繕積立金・水道光熱費などの費用は発生し続けます。これらの費用は相続財産から支払うことが原則ですが、相続財産に現金がない場合は、相続放棄者が一時的に立て替える必要があります(後日、相続財産清算人を通じて清算可能)。
相続財産清算人の選任手続きと費用
相続人全員が民泊 相続 放棄し、次順位の相続人もいない場合、民泊物件は相続財産法人となり、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる必要があります(民法952条)。
相続財産清算人の選任手続き:
- 申立先: 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
- 申立人: 利害関係人(債権者・特定遺贈を受けた者・検察官など)
- 必要書類: 申立書・被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)・相続人全員の戸籍謄本・相続放棄申述受理証明書・財産目録
- 費用: 収入印紙800円、郵便切手、予納金(20〜100万円程度、財産状況により異なる)
相続財産清算人の役割:
- 相続財産の調査・管理
- 債権者への弁済
- 残余財産がある場合は特定遺贈の履行
- 最終的に残った財産は国庫に帰属
債務超過の場合: 民泊物件の資産価値よりも借入・未払金が多い場合、相続財産清算人が債権者に配当を行い、残った債務は消滅します。債権者への配当は法定の優先順位に従って行われるため、すべての債権者が全額弁済を受けられるわけではありません。
相続放棄後の民泊物件を早期に手放す3つの方法
保存義務を早期に解消し、民泊物件を手放すには、以下の方法があります。
1. 次順位の相続人に引き渡す
次順位の相続人が相続を承認する場合、物件の鍵と管理を引き渡すことで保存義務が終了します。ただし、次順位の相続人も相続放棄する場合は、この方法は使えません。
2. 相続財産清算人を選任する
上記の手続きにより、家庭裁判所が選任した相続財産清算人に管理を移管します。予納金が必要ですが、最も確実に保存義務を終了させる方法です。
3. 現況渡し買取業者に相談する
一部の専門業者は、相続放棄後の民泊物件を現況渡しで買い取るサービスを提供しています。ただし、相続放棄後の売却は相続財産清算人の職務となるため、事前に弁護士・司法書士へ相談が必要です。
相続した民泊物件の売却や現況渡し買取については、マンション民泊の買取・売却完全ガイドもご参照ください。
まとめ|民泊の相続放棄は3ヶ月以内に専門家へ相談を
相続した民泊物件が赤字経営で、管理負担・法的リスク・心理的ストレスが大きい場合、民泊 相続 放棄は合理的な選択肢です。本記事の要点を以下にまとめます。
本記事の重要ポイント:
- 5つの判定チェックリストで70点以上なら相続放棄を強く推奨
- 相続放棄は相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述(民法915条)
- 手続き費用は約3,300円〜(専門家依頼なしの場合)、専門家依頼時は約3.3万〜10.3万円
- 2023年4月施行の改正民法940条により、相続放棄後も**「現に占有している」財産は保存義務**を負う
- 相続人全員が放棄した場合、相続財産清算人の選任が必要(予納金20〜100万円程度)
ただし、相続放棄はすべての相続財産を包括的に放棄する手続きであり、民泊物件のみを選択的に放棄することはできません。プラスの財産もある場合は、限定承認や単純承認後の売却も検討しましょう。
専門家への相談が必要なケース
以下のいずれかに該当する場合は、弁護士・司法書士・税理士へ早期に相談することを強く推奨します。
- 相続開始から既に60日以上経過している
- 相続人が複数おり、意見が分かれている
- 民泊物件以外にも相続財産・負債がある
- 限定承認を検討している(限定承認は相続人全員の同意が必要)
- 相続放棄後の保存義務について不安がある
- 相続財産清算人の選任が必要
無料相談・査定のご案内
相続した民泊物件の取り扱いにお困りの方は、StayExitの無料相談・査定サービスをご利用ください。相続放棄・売却・転用のどの選択肢が最適か、専門スタッフが丁寧にアドバイスいたします。
関連記事
相続した民泊物件の判断に役立つ関連記事もご参照ください。
免責事項
本記事は2026年1月時点の法令・統計データに基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言・税務助言を行うものではありません。相続放棄・限定承認・単純承認の判断は、個々の財産状況・家族関係・地域の法規制により異なります。実際の手続きを行う前に、必ず弁護士・司法書士・税理士等の専門家へご相談ください。
出典・参考資料:
- 裁判所「相続の放棄の申述」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00023.html
- 観光庁「住宅宿泊事業法の施行状況」: https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/business/host/construction_situation.html
- 国税庁トップページ: https://www.nta.go.jp/
民法・相続法の最新情報は、法務省公式サイト(https://www.moj.go.jp/)および各地方自治体の公式情報をご参照ください。
