民泊のマスターリース契約は原則として解約が非常に困難です。多くのオーナーが契約解除を希望しながらも、法的な壁に直面しているのが現状といえます。
民泊オーナーがマスターリース解約を望む3つの理由
民泊運営におけるマスターリース契約の解約を希望するオーナーには、以下のような共通した理由があります。
- 180日規制による収益悪化:2018年の住宅宿泊事業法施行により、民泊営業が年間180日に制限されたことで、当初想定していた収益を大きく下回るケースが多発しています。マスターリース会社からの賃料が期待値を下回り、採算が合わなくなった物件オーナーが解約を検討する事例が増加しています。
- 賃料減額要求への対応:市場環境の変化や稼働率の低下を理由に、マスターリース会社側から一方的な賃料減額を要求されるケースがあります。契約当初の条件と異なる運用が続くことで、オーナーとして契約の継続が困難と判断する状況が生まれています。
- 違法民泊の発覚:マスターリース会社が旅館業法や住宅宿泊事業法に違反した運営を行っていたことが判明し、オーナーが行政指導を受けるリスクに直面するケースです。法令遵守の観点から即座に契約解除を希望しても、会社側が応じないという深刻な問題が発生しています。
解約が困難な法的背景(借地借家法第28条)
マスターリース契約の解約が難しい最大の理由は、借地借家法第28条の規定にあります。この法律では、建物の賃貸人(オーナー)が賃貸借契約の更新を拒絶したり、解約を申し入れたりする場合には「正当の事由」が必要とされています。
正当事由とは、単にオーナー側の都合だけでなく、賃借人(マスターリース会社)の不利益や社会的な妥当性を総合的に考慮して判断される法的要件です。借地借家法は賃借人の立場を強く保護する法律であるため、オーナー側からの一方的な解約申し入れはほとんどのケースで認められません。
借地借家法では「正当の事由」がなければ更新拒絶や解約申入れができないとされており、国土交通省の「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」でも、解約には慎重な判断が必要であることが明記されています。
この法的背景により、民泊収益が悪化したという理由だけでは正当事由として認められず、多くのオーナーが契約解除を希望しながらも実現できない状況に陥っているのです。
民泊マスターリース契約を解約する具体的な方法
法的なハードルが高いマスターリース契約ですが、適切な手順を踏めば解約できる可能性はあります。ここでは解約が認められる条件と具体的な手続きについて解説します。
解約が認められる「正当事由」の5つの例
借地借家法第28条の正当事由として認められる可能性がある具体例は以下の通りです。
- オーナー自身または親族の居住・使用の必要性:オーナー本人や親族が建物に居住する必要性が高い場合、正当事由として認められる可能性があります。ただし、単なる希望ではなく、現在の住居の立ち退き要求を受けているなど、客観的な必要性の証明が求められます。
- 建物の老朽化による建て替え・大規模修繕の必要性:建物が著しく老朽化し、安全性の観点から建て替えや大規模修繕が必要不可欠な状況であれば、正当事由として考慮されます。建築士による診断書などの客観的証拠が重要になります。
- ローン返済困難など経済的理由:オーナー側に深刻な経済的困窮があり、物件を売却しなければ生活が維持できないといった切迫した事情がある場合、正当事由の一要素として考慮される可能性があります。
- サブリース会社の契約違反(家賃滞納、違法運営など):マスターリース会社が契約上の義務を履行しない場合、例えば賃料の長期滞納や契約書で定めた管理業務の放棄があれば、解約の正当な理由となります。特に民泊特有の問題として、旅館業法や住宅宿泊事業法に違反した違法運営が発覚した場合は、オーナーとして即座に契約解除を求める正当な理由になり得ます。
- 立退料の支払いによる補完:上記1~4の正当事由が単独では弱い場合でも、適切な額の立退料を提示することで正当事由が補完され、解約が認められるケースがあります。立退料は家賃の3~12ヶ月分が相場とされています。
民泊特有の正当事由として注目すべき事例としては、2018年の住宅宿泊事業法施行により、当初想定していた民泊運営が法的に不可能になった場合や、マスターリース会社が無届営業や違法民泊を行っていたことが判明した場合などがあります。これらは民泊ビジネス特有の解約理由として、裁判所でも一定の考慮がなされる可能性があります。
解約手続きの4ステップと注意点
マスターリース契約を解約するための具体的な手順は以下の通りです。
ステップ1:契約書の確認
まず現在の契約書を精査し、解約に関する条項(解約予告期間、違約金条項など)を確認します。契約書に中途解約条項がある場合、その条件を満たせば比較的スムーズに解約できる可能性があります。
ステップ2:書面での解約通知
正当事由があると判断した場合、内容証明郵便でマスターリース会社に解約の意思表示を行います。借地借家法では、解約申し入れから6ヶ月以上の期間が必要とされているため、解約希望日の少なくとも6ヶ月前には通知する必要があります。
ステップ3:サブリース会社との交渉
解約通知後、マスターリース会社との交渉が始まります。正当事由の内容を具体的に説明し、必要に応じて立退料の提示なども検討します。この段階で弁護士に依頼することで、法的な観点から交渉を有利に進められる可能性が高まります。
ステップ4:合意または法的手続き
双方が合意に至れば、解約合意書を締結して契約を終了させます。合意に至らない場合は、建物明渡請求訴訟などの法的手続きを検討する必要があります。裁判では正当事由の有無が争点となり、判決までには半年から1年以上かかることも珍しくありません。
東京地裁平成24年判決では、建物の老朽化と立退料の提示により正当事由が認められた事例があり、適切な準備と証拠の提示が解約実現の鍵となることが示されています。
国土交通省の「賃貸住宅管理業法」では、サブリース事業者に対して契約内容の重要事項説明義務が課されており、解約に関する条件も明確に説明することが求められています。契約書にこれらの説明が不十分な場合、オーナー側に有利な材料となる可能性もあります。
民泊撤退を検討する際の全体的な流れについては、別途専門記事で詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。
解約時に発生する費用と解約できない場合の選択肢
マスターリース契約の解約には多額の費用が発生する可能性があります。また、解約が困難な場合の代替手段についても理解しておくことが重要です。
違約金・立退料の相場と支払い義務
マスターリース契約を解約する際に発生する主な費用は以下の通りです。
違約金の相場:契約書に中途解約条項がある場合、違約金の支払いが求められることがあります。一般的な相場は家賃の6ヶ月分程度とされていますが、契約内容によっては1年分以上を求められるケースもあります。ただし、あまりにも高額な違約金条項は消費者契約法や民法の公序良俗違反として無効と判断される可能性もあります。
立退料の相場:正当事由を補完するために支払う立退料は、一般的に家賃の3~12ヶ月分が相場とされています。物件の立地条件、マスターリース会社の営業継続への影響度、解約を求める緊急性などによって金額は変動します。裁判所が立退料の額を判断する場合、これらの要素を総合的に考慮して決定されます。
弁護士費用の目安:マスターリース契約の解約交渉や訴訟を弁護士に依頼する場合、着手金として20~50万円、成功報酬として回収額の10~20%程度が一般的です。訴訟に発展した場合はさらに費用が増加する可能性があります。
これらの費用を合計すると、解約実現までに数百万円単位のコストが発生する可能性があることを認識しておく必要があります。
解約できない場合の3つの代替手段
正当事由が認められず解約が困難な場合、以下の代替手段を検討することが現実的な選択肢となります。
| 選択肢 | メリット | デメリット | 適した状況 |
| 物件の売却(マスターリース契約付き) | ・即座に物件から離脱できる・買主が契約を承継するため解約不要・法的紛争を回避できる | ・マスターリース付き物件は売却価格が低くなる傾向・買主が見つかりにくい可能性 | 早期に物件を手放したい、長期的な紛争を避けたい場合 |
| 専門業者による買取・借上げ | ・最短3営業日での成約が可能・複雑な契約関係をまとめて解決・現況渡しOKで手間がかからない | ・市場価格より買取価格が低くなる・業者選定が重要 | すぐに問題を解決したい、時間とコストをかけたくない場合 |
| 契約条件の見直し交渉 | ・契約を継続しながら条件改善・賃料の適正化が期待できる・法的紛争を回避 | ・相手方の同意が必要・根本的な解決にならない可能性・交渉が長期化する恐れ | 完全な解約は困難だが条件改善を図りたい場合 |
物件の売却は、マスターリース契約ごと物件を第三者に売却する方法です。買主が契約上の地位を承継するため、オーナーとしての責任から完全に離脱できます。ただし、マスターリース契約が付いた物件は投資用不動産として魅力が低く、売却価格が相場より低くなる傾向があります。
専門業者による買取・借上げは、民泊物件や複雑な契約関係を抱えた物件を専門に扱う業者に売却する方法です。一般的な不動産売却と比較して、マスターリース契約の解除交渉や法的手続きを業者が代行してくれるため、オーナーの負担が大幅に軽減されます。市場価格より買取価格は低くなりますが、時間とコストを考慮すれば合理的な選択肢となるケースが多くあります。
契約条件の見直し交渉は、完全な解約ではなく、賃料の減額や管理方法の変更など、契約条件を現実的な内容に修正する方法です。双方が歩み寄ることで、訴訟リスクを回避しながら状況を改善できる可能性があります。
民泊マスターリース契約でお困りの際は、専門業者への相談も有効な選択肢です。ステイエグジットでは、民泊物件の買取・借上げに対応しており、マスターリース契約を含む複雑な契約関係もまとめて解決可能です。最短3営業日での成約、現況渡しOKで、スピーディーな問題解決をサポートします。
まとめ:民泊マスターリース解約は計画的に進めよう
民泊のマスターリース契約解約について、重要なポイントを改めて整理します。
記事の要点:
- マスターリース解約には借地借家法第28条の正当事由が必要:オーナー側からの一方的な解約は法的に困難であり、建物使用の必要性、老朽化、契約違反、立退料の提示など、複数の要素を組み合わせて正当事由を構成する必要があります。
- 違約金・立退料で家賃の6~12ヶ月分以上の費用がかかる可能性:解約実現までには違約金、立退料、弁護士費用などで数百万円単位のコストが発生する可能性があり、経済的な負担を十分に考慮する必要があります。
- 解約が困難な場合は物件売却や専門業者の活用も選択肢:法的手続きによる解約が困難または長期化する場合、マスターリース契約ごと物件を売却したり、専門業者の買取サービスを利用したりすることで、より迅速に問題を解決できる可能性があります。
読者の状況別アクション:
- 正当事由がある場合:契約違反や違法運営の証拠がある、建物の老朽化が著しいなど、明確な正当事由がある場合は、不動産に詳しい弁護士に相談して解約手続きを進めることをお勧めします。内容証明郵便での解約通知から始め、交渉または訴訟によって解約を実現する道筋を検討しましょう。
- 正当事由が弱い場合:収益悪化などオーナー側の都合が主な理由で、客観的な正当事由が弱い場合は、法的手続きよりも代替手段を検討する方が現実的です。物件の売却や専門業者による買取を視野に入れ、時間とコストの両面から最適な選択肢を選びましょう。
- すぐに解決したい場合:長期化する法的交渉を避け、できるだけ早く問題を解決したい場合は、専門業者の無料査定を利用することをお勧めします。複雑な契約関係をまとめて対応してもらえるため、オーナーの負担を大幅に軽減できます。
民泊撤退の手続き全般については別途専門記事で詳しく解説しています。また、民泊物件の売却方法についても、市場動向や査定ポイントを含めて解説していますので、併せてご参照ください。
民泊マスターリース契約の解約や撤退でお悩みの際は、ステイエグジットの無料査定をご利用ください。複雑な契約関係もまとめて対応し、最短3営業日での成約が可能です。現況渡しOK、1Rから5棟一括まで対応しています。
免責事項:
本記事の情報は2026年1月時点のものです。法律・判例・市場状況は変動する可能性がありますので、最新情報は弁護士や専門家にご確認ください。個別の契約内容により解約の可否や費用は異なりますので、具体的な判断は専門家へご相談ください。
