民泊におけるインバウンド回復遅れの3大要因|稼働率低迷の真相と対策

2024年、訪日外国人観光客数は3,687万人と過去最高を記録しました。しかし、民泊市場の回復は期待されたほど進んでいません。「インバウンドは増えているのに、なぜ民泊は稼げないのか」——この疑問を抱く民泊オーナーが増えています。本記事では、インバウンド回復と民泊稼働率のギャップを最新データで検証し、その構造的要因と今後の判断基準を解説します。


民泊のインバウンド回復遅れとは|訪日客増加でも稼働率57%の現実

インバウンドは過去最高、しかし民泊稼働率は低迷

2024年の訪日外国人観光客数は3,687万人と、コロナ禍前の2019年(3,188万人)を大きく上回り、過去最高を記録しました(日本政府観光局JNTO調べ)。政府の「2025年に訪日客4,000万人」という目標も視野に入る勢いで、インバウンド市場は順調に回復しています。

しかし、民泊市場の実態は大きく異なります。観光庁「住宅宿泊事業の宿泊実績」(2024年8〜9月)によると、届出住宅あたりの平均宿泊日数は2ヶ月間で17.2日でした。これを年換算すると約103日となり、民泊新法で認められている上限180日に対して**稼働率は約57%**にとどまっています。

さらに注目すべきは、コロナ禍前の2019年と比較しても、民泊の稼働率は回復していないという点です。2019年の平均宿泊日数は年間約120日前後だったとされており、現在はそれを大きく下回る水準で推移しています。

つまり、「訪日客は増えているのに、民泊は回復していない」という矛盾が数字で裏付けられているのです。

「回復遅れ」が意味する3つのギャップ

民泊のインバウンド回復遅れは、以下の3つのギャップとして現れています。

①期待値とのギャップ

多くの民泊オーナーは、インバウンド回復に伴って稼働率も回復すると期待していました。しかし実際には、訪日客増加の恩恵を民泊が十分に受けられていません。この期待と現実のギャップが、オーナーの失望と不安を生んでいます。

②ホテルとのギャップ

ホテル業界は順調に回復しています。帝国データバンクの調査によると、2024年上半期のホテル・旅館の稼働率は75%を超え、コロナ禍前の水準に戻りつつあります。一方、民泊の稼働率57%との間には大きな差があり、宿泊施設としての競争力の差が浮き彫りになっています。

③地域間のギャップ

民泊の稼働率は地域によって大きく異なります。東京・大阪などの大都市圏や京都などの観光地では比較的高い稼働率を維持している物件もある一方、地方都市や規制の厳しい地域では稼働率が30%を下回るケースも珍しくありません。

この3つのギャップが、民泊オーナーに「続けるべきか、撤退すべきか」という厳しい判断を迫っています。

民泊市場の現状と今後で詳しく解説しています。


民泊のインバウンド回復遅れの3大要因|供給過多・価格競争・中国依存

供給過多による競争激化|届出件数57,512件、廃業率36%

民泊市場が回復しない第一の要因は、供給過多による競争激化です。

観光庁「住宅宿泊事業法の施行状況」(2024年11月14日)によると、2018年の民泊新法施行から2024年11月までの累計届出件数は57,512件に達しています。一方、事業廃止件数は20,661件で、**廃業率は約36%**となっています。

この数字が示すのは、以下の2つの事実です。

①参入と撤退のサイクルが激しい市場

累計届出件数57,512件のうち、現在実際に稼働している物件は約36,851件です。つまり、3件に1件以上が廃業している計算になります。コロナ禍での打撃から回復できずに撤退したオーナー、規制強化に対応できなかったオーナー、収益が見込めないと判断したオーナーなど、撤退理由は様々ですが、市場の厳しさを物語っています。

②供給過多による価格競争の激化

約36,851件の稼働物件が限られた宿泊需要を奪い合う構造になっており、特に都市部では価格競争が激化しています。Airbnbや楽天STAY、booking.comなどのプラットフォームでは、似たような物件が同じエリアに多数掲載されており、価格を下げなければ予約が入らない状況が続いています。

結果として、宿泊単価の下落が収益性を圧迫し、稼働率が上がっても利益が出ないという悪循環に陥っているのです。

ホテルとの価格競争と中国人観光客減少リスク

民泊市場が回復しない第二・第三の要因は、ホテルとの価格競争中国人観光客減少リスクです。

②ホテルとの価格競争

近年、ビジネスホテルチェーンが低価格プランを充実させており、民泊との価格差が縮小しています。例えば、東京都心部でも1泊5,000円〜7,000円程度で泊まれるビジネスホテルが増えており、清潔さ・安全性・利便性を考慮すると、価格面での民泊の優位性が薄れています。

特に単身旅行者やビジネス利用者にとっては、ホテルの方が利便性が高く、民泊は「グループ旅行」や「長期滞在」といった特定のニーズに限定される傾向が強まっています。

③中国人観光客減少リスク

民泊市場のもう一つの構造的問題は、中国人観光客への依存度の高さです。

トラベルボイス「観光統計で読むインバウンド旅行者の実態」(2025年12月16日)によると、2025年11月の中国人訪日客数は前年同月比でわずか3%増にとどまり、回復が鈍化しています。中国経済の減速、日中関係の不透明感、中国政府の渡航自粛呼びかけなどが背景にあります。

コロナ禍前の2019年、訪日外国人のうち中国人は約30%(約960万人)を占めており、民泊利用者の多くも中国人でした。特にAirbnbなどのプラットフォームでは、中国人利用者の割合が非常に高かったため、中国人客の減少は民泊市場に直接的な打撃を与えています。

具体的な影響の試算

仮に中国人訪日客が前年比で10%減少した場合、民泊市場への影響はどの程度になるのでしょうか。

  • 2024年の訪日客数: 3,687万人
  • 中国人訪日客(推定): 約1,000万人(全体の約27%)
  • 中国人の民泊利用率(推定): 約15%
  • 中国人の民泊利用者数: 約150万人

中国人客が10%減少すると、民泊利用者は約15万人減少します。民泊の平均宿泊日数を3日とすると、年間約45万泊の需要が失われる計算になります。これは、民泊市場全体の宿泊実績(2024年8〜9月で約317万泊、年換算約1,900万泊)の約2.4%に相当します。

この数字は一見小さく見えますが、すでに供給過多で競争が激化している市場において、2〜3%の需要減少は収益性に大きな影響を与えます。


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民泊のインバウンド回復遅れ下での撤退判断|続けるべきか、撤退すべきか

続けるべきケース|稼働率50%以上・黒字維持

インバウンド回復の遅れという厳しい環境下でも、以下の条件を満たしている場合は、民泊運営を継続する価値があります。

①稼働率50%以上を維持している

年間稼働日数が90日以上(稼働率50%以上)をコンスタントに維持できている物件は、市場平均(稼働率57%)に近い水準です。特に、東京・大阪・京都などの主要都市や観光地で、安定した予約が入っている場合は継続の価値があります。

②黒字経営を維持している

固定費(管理費、光熱費、通信費、清掃費など)を差し引いても月々黒字を維持できている場合は、短期的には継続が妥当です。ただし、収益が月数万円程度の場合は、リスクと手間を考慮して長期的な判断が必要です。

③規制が緩い地域で運営している

豊島区、台東区、荒川区など、民泊規制が比較的緩い地域で運営している場合は、今後も安定した運営が見込めます。逆に、京都市、新宿区、中央区など規制が厳しい地域では、今後さらに規制が強化される可能性があるため注意が必要です。

④物件タイプが1LDK以上

ワンルーム(1R)よりも、1LDK以上の広めの物件は、家族連れやグループ旅行者からの需要が高く、宿泊単価も高めに設定できます。このタイプの物件は、ホテルとの差別化がしやすく、競争力を維持しやすい傾向があります。

撤退すべきケース|稼働率30%以下6ヶ月継続・赤字3ヶ月以上

一方、以下の条件に該当する場合は、早期撤退を真剣に検討すべきタイミングです。

①稼働率30%以下が6ヶ月以上継続

年間稼働日数が54日以下(稼働率30%以下)の状態が6ヶ月以上継続している場合、固定費をカバーできず赤字が累積します。業界関係者の推計によると、稼働率が30%を下回ると収益構造が成り立たず、改善の見込みも低いとされています。

②赤字が3ヶ月以上継続

月々の収支が赤字で、3ヶ月以上改善の兆しが見えない場合は、早期撤退を検討すべきです。赤字が長引けば長引くほど累積損失が拡大し、撤退時の資金的余裕がなくなります。

③規制強化地域で運営している

京都市(住居専用地域での1月〜2月のみ営業)、新宿区(住居専用地域での月曜正午〜金曜正午の営業禁止)、中央区(週末のみ営業)など、厳格な規制がある地域では、今後さらに規制が強化される可能性があります。規制強化により稼働率がさらに低下するリスクを考慮すべきです。

④近隣トラブルが発生している

騒音、ゴミ出し、マナー違反などで近隣住民や管理組合とトラブルが発生している場合、継続は困難です。管理組合から民泊禁止の警告を受けた場合は、早期撤退が賢明です。

⑤物件タイプがワンルーム(1R)

ワンルームは宿泊単価が低く、ホテルとの価格競争に巻き込まれやすい傾向があります。特に都市部では、同じ価格帯でビジネスホテルが選ばれるケースが増えており、競争力の低下が顕著です。

簡易的な判断フローチャート

以下の質問に答えて、自分の状況を確認してみましょう。

  1. 稼働率は50%以上ですか? → YES→継続検討 / NO→次へ
  2. 稼働率30%以下が6ヶ月以上継続していますか? → YES→撤退検討 / NO→次へ
  3. 月々の収支は黒字ですか? → YES→継続検討 / NO→次へ
  4. 赤字が3ヶ月以上継続していますか? → YES→撤退検討 / NO→継続検討
  5. 規制強化地域(京都・新宿・中央区など)で運営していますか? → YES→撤退検討 / NO→継続検討

この判断基準はあくまで目安ですが、複数の「撤退検討」に該当する場合は、早めに専門業者へ相談することをおすすめします。

民泊撤退の手続きと費用で詳しく解説しています。


まとめ|民泊のインバウンド回復遅れの実態と次のアクション

民泊のインバウンド回復遅れについて、重要なポイントをまとめます。

  1. 訪日客は過去最高3,687万人だが、民泊稼働率は57%(103日/180日)に低迷しています。インバウンドは回復しているものの、民泊市場はその恩恵を十分に受けられていません。
  2. 回復遅れの3大要因は①供給過多(届出57,512件、廃業率36%)、②ホテルとの価格競争、③中国依存リスクです。特に中国人観光客の回復鈍化(2025年11月は前年比3%増)は、民泊市場に直接的な打撃を与えています。
  3. 稼働率30%以下が6ヶ月継続、赤字が3ヶ月以上継続する場合は早期撤退を検討すべきです。累積損失が拡大する前に、冷静な判断が求められます。

状況別の推奨アクション

黒字継続中の方

市場動向を定期的に確認しつつ、運営を継続しましょう。ただし、稼働率が下降傾向にある場合は、早めに改善策(価格見直し、プラットフォームの追加、インテリアのリニューアルなど)を検討してください。

赤字継続中の方

撤退タイミングを真剣に検討しましょう。赤字が長引けば長引くほど累積損失が拡大し、撤退時の選択肢が狭まります。専門業者に相談し、買取・借上げ・仲介のどの方法が最適か判断することをおすすめします。

撤退検討中の方

専門業者へ相談し、費用を抑えた撤退方法を検討しましょう。現況渡しで買取してくれる業者を選ぶことで、リフォーム費用や家具処分費用を節約できます。

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免責事項:
本記事の情報は2026年1月時点のものです。民泊市場の動向、インバウンド需要、法律・条例は変動する可能性がありますので、最新情報は観光庁「民泊制度ポータルサイト」や日本政府観光局(JNTO)の公式サイト等でご確認ください。

参考資料・出典:

  • 観光庁「住宅宿泊事業法の施行状況」(2024年11月14日)
  • 観光庁「宿泊旅行統計調査」(2024年・2025年)
  • 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」(2024年)
  • トラベルボイス「観光統計で読むインバウンド旅行者の実態」(2025年12月16日)
  • 帝国データバンク「旅館・ホテル経営業者の動向調査」(2024年)
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