高山市でインバウンド需要の高まりとともに民泊を運営してきたものの、競合の急増や遠隔運営の負担から売却を検討されている方は少なくありません。2024年には外国人宿泊者が過去最多の77万人に達し、人口8.8万人の7倍超のインバウンドが押し寄せる希少エリアとなった一方で、民泊施設も急増し競合が激化しています。
「売却を考えているけれど、仲介・買取・M&A、どの方法が自分に合っているのか分からない」「高稼働率を維持できているが、このまま続けるべきか迷っている」と悩まれる方も多いでしょう。
本記事では、高山市の民泊市場の実情を踏まえ、3つの売却方法の違いと判断基準、具体的な手順までを一貫して解説します。
高山の民泊を売却する背景|インバウンド急増と競合激化の実情
年間180日の営業制限と高山の規制
住宅宿泊事業法により、届出を行った民泊は年間180日までしか営業できません。岐阜県の住宅宿泊事業の手引きによれば、岐阜県では地域や期間による追加制限は設けられていないため、高山市内でも年間180日の上限内で営業が可能です。
過去最多77万人のインバウンドと市場の実情
高山市公式の観光統計によれば、2024年の外国人宿泊者数は76万9千人に達し、過去最高を記録しました。朝日新聞(2025年1月20日)の報道では、これは前年比約7割増という驚異的な伸びです。人口8.8万人の都市に77万人のインバウンドが訪れるという、人口の7倍超という希少な観光地となっています。
飛騨高山の古い町並み、伝統文化、飛騨牛、温泉といった魅力により、欧米・アジアからの旅行者に高い人気を誇ります。平均宿泊単価(ADR)は約27,000円、稼働率は57%前後と、全国の民泊平均(40%台)を大きく上回る高水準を維持しています。
単純計算では、年間売上は稼働率57%×180日×27,000円=約277万円となり、運営コストを差し引いても一定の収益を確保できる環境です。
民泊市場全体の動向については、民泊市場の現状と今後で詳しく解説しています。
民泊急増で競合激化、住宅地が「観光地化」
一方で、インバウンド需要の高まりとともに民泊施設も急増しています。中日新聞(2024年8月16日)は「民泊急増で住宅地が突然『観光地』に 住民の戸惑い解消のカギは」との見出しで、住宅地における民泊の増加と近隣トラブルを報じています。
競合激化の具体的な影響
- 同エリアに複数の民泊が乱立し、価格競争が激化
- 差別化(英語対応、和室体験、地元食材の提供等)が必須に
- 管理代行費用・清掃費用・Airbnb手数料が売上を圧迫
- 近隣住民からの苦情(騒音、ゴミ出し、駐車場問題等)が増加
現在は稼働率57%を維持できていても、競合増加により今後は低下する可能性があります。実際、管理コストが利益を上回り、赤字に転じたケースも報告されています。
売却を検討する主な理由
高山の民泊オーナーが売却を検討する主な理由は以下の通りです。
- 競合激化による稼働率・収益の低下
- 遠隔運営の負担(県外在住の場合、清掃・トラブル対応が困難)
- 近隣トラブル(騒音、ゴミ、駐車場等)
- 管理代行費用の負担増
- インバウンド需要の持続性への不安(為替変動、国際情勢)
- 年間180日制限による収益頭打ち
高山ブランドの強みは不動産市場を下支えする一方、「エリア価値は高いが継続運営は難しい」という背景があります。
地方での民泊運営の課題については、別記事で詳しく解説しています。
仲介・買取・M&A、3つの売却方法の違いと比較
民泊を手放す方法は大きく分けて「仲介」「買取」「M&A(事業譲渡)」の3つがあります。それぞれの特徴を理解し、自分に合った方法を選ぶことが重要です。
民泊売却の基本については、民泊売却の完全ガイドをご覧ください。
3つの売却方法の比較表
| 項目 | 仲介 | 買取 | M&A(事業譲渡) |
| 成約速度 | 3〜6ヶ月 | 最短3営業日〜1ヶ月 | 2〜6ヶ月 |
| 売却価格 | 市場価格(高値期待) | 市場価格の70〜85% | 物件+事業価値(高値可能性) |
| 手間 | 内覧対応・交渉必要 | 最小限(現況渡し可) | デューデリジェンス必要 |
| 現況渡し | 原則不可(原状回復必要) | 可能 | 事業継続前提 |
| 対象 | 物件のみ | 物件のみ | 物件+運営実績+顧客+Airbnbアカウント |
仲介:高値を狙うが時間と手間がかかる
メリット
- 市場価格に近い売却価格が期待できる
- 複数の買い手候補にアプローチ可能
- 一般個人・投資家など幅広い層が対象
デメリット
- 売却完了まで3〜6ヶ月かかる場合がある
- 内覧対応・価格交渉が必要
- 原状回復(家具・家電の撤去、クリーニング)が必要
- 売却期間中も固定資産税・管理費が発生
向いている人
- 時間をかけて高値で売却したい
- 高山在住で内覧対応が可能
- 原状回復費用(数十万〜100万円超)を負担できる
買取:最短成約・現況渡し可能だが価格は低め
メリット
- 最短3営業日〜1ヶ月で成約可能
- 家具・家電・寝具をそのまま引き渡せる「現況渡し」が可能
- 内覧対応・価格交渉が最小限
- 原状回復費用が不要
- 遠隔地からでも手続き可能
デメリット
- 売却価格は市場価格の70〜85%程度
- 買取業者の選定が重要
向いている人
- 今すぐ手放したい、遠隔運営の負担を解消したい
- 県外在住で内覧対応が困難
- 現況渡しで手離れしたい
- 価格より手間の軽減を優先
民泊買取の詳細は、民泊買取の完全ガイドをご参照ください。
M&A(事業譲渡):事業価値を含めた高値可能性だが手続き複雑
メリット
- 物件価格+事業価値(運営実績・顧客リスト・Airbnbアカウント等)を含めた売却が可能
- 高稼働率(57%)・外国人顧客リスト・高評価レビューが付加価値に
- 買い手は事業をそのまま引き継げるため、プレミアム価格が期待できる
デメリット
- デューデリジェンス(財務・法務・運営体制の精査)が必要
- 成約まで2〜6ヶ月かかる
- 運営実績・収支データの開示が必要
- 買い手候補が限定される(事業運営者・投資家)
向いている人
- 高稼働率(57%)を維持し、黒字運営中
- 外国人顧客リスト、高評価レビュー、Airbnbスーパーホストなどの実績がある
- 事業価値を含めて高値で売却したい
- 手続きに時間をかけられる
M&Aによる事業譲渡については、民泊M&A・事業譲渡の流れと注意点で詳しく解説しています。
どの方法を選ぶ?高山で判断する4つのポイント
どの売却方法を選ぶべきかは、以下の4つのポイントで判断できます。
判断ポイント1:インバウンド需要の持続性への見方
楽観的(77万人継続を期待)
- 飛騨高山ブランドは世界的に確立しており、今後も需要は安定
- 稼働率57%・高評価レビューなど事業価値がある
- → M&Aまたは仲介で高値を狙う
慎重(競合激化で稼働率低下を懸念)
- 民泊急増で競合が激化、今後は稼働率低下・価格競争が懸念される
- 近隣トラブルのリスクもある
- → 買取で早期撤退
判断ポイント2:売却の緊急性(今すぐか、時間をかけられるか)
今すぐ手放したい
- 遠隔運営の負担を即座に解消したい
- 管理代行費用・固定資産税を早く止めたい
- → 買取(最短3営業日〜1ヶ月)
時間をかけて高値を狙える
- 売却期間中も管理を継続できる
- 3〜6ヶ月待てる
- → 仲介(3〜6ヶ月)、M&A(2〜6ヶ月)
判断ポイント3:遠隔運営の負担(県外在住か、高山在住か)
県外在住・遠隔運営
- 内覧対応のために高山に来るのは困難
- 清掃・トラブル対応も管理代行に依存
- → 買取(内覧対応不要、現況渡し可)
高山在住・近隣
- 内覧対応・管理継続が可能
- 地元ネットワークを活用できる
- → 仲介可能、M&A可能
現況渡しのメリットについては、民泊売却で現況渡しを選ぶメリットと注意点で詳しく解説しています。
判断ポイント4:物件のみ vs 事業価値を含める
物件のみを売却
- 運営実績は特に強みがない
- 稼働率が平均以下、赤字運営
- → 仲介 or 買取
事業価値を含めて売却
- 高稼働率(57%)・外国人顧客リスト・Airbnbスーパーホスト・高評価レビュー
- 黒字運営、年間売上277万円以上
- → M&A
判断フローチャート(簡易版)
遠隔運営 + 今すぐ手放したい → 買取
高山在住 + 時間あり + 高値優先 → 仲介
高稼働率(57%) + 黒字運営 + 事業価値あり → M&A
高山で民泊を売却する手順(3つの方法別)
ここでは、3つの売却方法それぞれの具体的な手順を解説します。
仲介の場合(3ステップ)
ステップ1:査定依頼・媒介契約
複数の不動産会社に一括査定を依頼します。必要な情報は以下の通りです。
- 物件の住所・築年数・延床面積・間取り
- 民泊届出番号
- 設備リスト(家具・家電・寝具・Wi-Fi等)
- 直近の稼働率・売上実績
- 外国人対応実績(英語対応、多言語案内等)
- 管理費・修繕積立金・固定資産税
査定額を受け取ったら、媒介契約(専属専任・専任・一般)を締結します。
ステップ2:売却活動・内覧対応
不動産会社が広告を掲載し、買い手候補を募集します。内覧対応では、以下をアピールします。
- 高山駅からのアクセス、古い町並みへの近接性
- 外国人対応実績(英語案内、多言語マニュアル等)
- 高稼働率・高評価レビュー
- 近隣の観光資源(高山祭、飛騨牛、温泉等)
価格交渉を経て、売買契約を締結します。
ステップ3:契約・決済・廃業届
売買契約後、決済日に残金を受領し、所有権移転登記を行います。同時に、民泊の廃業届を提出します。
廃業届の提出
- 提出先:岐阜県または高山市保健所(詳細は岐阜県住宅宿泊事業の手引きを参照)
- 提出期限:事業廃止後10日以内
- 必要書類:廃止届出書、届出番号通知書の写し等
全体スケジュール:3〜6ヶ月
買取の場合(3ステップ)
ステップ1:査定依頼
複数の買取業者に一括査定を依頼します。必要な情報は以下の通りです。
- 物件の住所・築年数・延床面積・間取り
- 民泊届出番号
- 設備リスト(家具・家電・寝具・Wi-Fi等)
- 直近の稼働率・売上実績
- インバウンド対応状況(英語対応、多言語案内等)
- 管理費・修繕積立金・固定資産税
- 近隣状況(駐車場の有無、アクセス等)
オンライン査定(写真・資料のみ)と現地査定を併用し、1〜7日で査定額が提示されます。
買取業者の選び方については、民泊買取業者の選び方と比較ポイントで詳しく解説しています。
ステップ2:条件交渉・契約
査定額を受け取ったら、以下の条件を比較・交渉します。
- 買取価格
- 引渡し時期(最短3営業日〜3ヶ月)
- 現況渡しの可否
- 廃業届の代行サポートの有無
契約書では、以下の項目を必ず確認してください。
- 瑕疵担保免責条項(現況渡しの場合、売主の瑕疵担保責任が免除されるケースが多い)
- 手付金・残金の支払時期
- 所有権移転登記の時期
重要事項説明を受け、契約書に署名・捺印します。
ステップ3:決済・引渡し・廃業届
決済日に残金を受領し、所有権移転登記を行います。同時に以下を引き継ぎます。
- 鍵(マスターキー・スペアキー)
- 民泊管理アカウント(Airbnb・Booking.com等)
- 清掃業者・Wi-Fiルーター等の引継ぎ
- 設備リスト・取扱説明書
廃業届の提出
- 提出先:岐阜県または高山市保健所
- 提出期限:事業廃止後10日以内
- 必要書類:廃止届出書、届出番号通知書の写し等
多くの買取業者は廃業届の提出代行サービスを提供しています。手続きに不安がある方は、サポート付きの業者を選ぶと安心です。
廃業届の詳細は、住宅宿泊事業の廃止届を出す手順と注意点をご確認ください。
外国人予約のキャンセル対応
売却決定後、Airbnb・Booking.com等のプラットフォームで受け付けている外国人予約をキャンセルする必要があります。早めに対応し、ゲストへの丁寧な説明とキャンセルポリシーの適用を行いましょう。
全体スケジュール:最短3営業日〜1ヶ月
M&A(事業譲渡)の場合(4ステップ)
ステップ1:事業評価・デューデリジェンス準備
M&Aでは物件だけでなく事業全体を評価するため、以下の資料を整理します。
- 運営実績(稼働率57%、年間売上277万円等)
- 外国人顧客リスト・予約履歴
- Airbnbアカウント(スーパーホスト、高評価レビュー等)
- 収支データ(直近2〜3年分)
- 設備リスト・清掃業者との契約
- 近隣との関係(トラブル有無等)
ステップ2:買い手探索・交渉
M&A仲介会社に依頼し、買い手候補を探索します。高山のインバウンド需要(77万人)、高稼働率(57%)、飛騨高山ブランドの強みを強調し、事業価値をアピールします。
買い手候補との条件交渉では、以下を詰めます。
- 譲渡価格(物件価格+のれん代)
- 引継ぎ内容(予約・顧客情報・Airbnbアカウント・清掃業者等)
- 許可・届出の名義変更手続き
- デューデリジェンスのスケジュール
ステップ3:デューデリジェンス
買い手候補が財務・法務・運営体制を精査します。収支データ、契約書、近隣トラブルの有無、設備の状態などを開示します。
ステップ4:契約・引継ぎ・届出変更
事業譲渡契約を締結し、以下を引き継ぎます。
- 物件の所有権移転登記
- 予約・顧客情報・Airbnbアカウント
- 清掃業者・Wi-Fiルーター等の契約引継ぎ
- 設備リスト・取扱説明書
届出事業者の変更手続き
M&Aの場合、民泊の届出事業者を買い手に変更する手続きが必要です(廃業届は不要)。詳細は岐阜県または高山市保健所にご確認ください。
全体スケジュール:2〜6ヶ月
民泊の撤退手続き全般については、民泊を撤退する前に知っておくべきことをご覧ください。
まとめ|高山の民泊売却で大切なこと
高山市は2024年に外国人宿泊者77万人(過去最多)を記録し、人口の7倍超のインバウンドが押し寄せる希少な観光地です。稼働率57%、平均宿泊単価27,000円と高水準を維持していますが、一方で民泊施設の急増により競合が激化し、近隣トラブルも増加しています。
3つの売却方法の選び方
- 買取:遠隔運営+今すぐ手放したい+現況渡し希望 → 最短3営業日〜1ヶ月
- 仲介:高山在住+時間あり+高値優先 → 3〜6ヶ月
- M&A:高稼働率57%+黒字運営+事業価値あり → 2〜6ヶ月
4つの判断ポイント
- インバウンド需要の持続性への見方(楽観 or 慎重)
- 売却の緊急性(今すぐ or 時間あり)
- 遠隔運営の負担(県外在住 or 高山在住)
- 物件のみ vs 事業価値を含める
民泊を手放すことは「撤退」ではなく、「次のステージへの選択肢」です。高山の不動産を賃貸に転換する、他のエリアに投資する、あるいは事業から完全に手を引いて資金を別の用途に回すなど、さまざまな道があります。
インバウンド需要の持続性を冷静に見極め、自分に合った売却方法を選ぶことが重要です。地方での民泊売却全般については、地方での民泊売却完全ガイドをご参照ください。
売却を検討される際は、複数の選択肢を比較し、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で判断されることをお勧めします。高山の民泊市場は今後も変化していくため、タイミングを見極めることも大切です。より詳しい情報や具体的な相談が必要な場合は、無料査定サービスなどを活用し、専門家の意見を参考にされると良いでしょう。
免責事項
本記事は2026年1月時点の情報に基づいて作成されています。高山市の民泊規制・市場状況は変更される可能性がありますので、最新情報は高山市公式HP・岐阜県HP等でご確認ください。また、民泊の売却に関する判断は、専門家(不動産業者・税理士・M&A仲介会社等)への相談を推奨します。
